荻野目洋子「246コネクション」

246コネクション[+7]

246コネクション[+7]

 87年作。ほぼ全曲売野雅勇筒美京平コンビのコンセプトアルバム。オリジナルアルバムでは86年の「ノンストッパー」に続く売上実績をたたき出している。
 荻野目洋子はドラマの漂わない人である。
 「〜〜であろう」「〜〜であって欲しい」という視聴者の思いを鏡の如く反映し、佇まいの背後にさながら光背のごとく漂わせる。売れるアイドルというのは、大抵そういうものである。聖子しかり、明菜しかり。しかし、彼女にはそれがない。
 ただサウンドと程よくまじりあう、そこそこ上手いボーカルだけが、そこにあるのだ。これは、どちらかと言うと後のJ-POP系シンガーに近い。
 このアルバムにしても、青山、六本木など国道246号線沿いをロケーションに選んだ売野雅勇お得意50〜60年代映画風ドラマを彼女にあてがっているのだが、そのドラマは決して彼女の中に深く降りてはいかない。
 ゆえに、声から実体がまるで見えない。およそ彼女にとって接点のまるでない石原裕次郎・追悼をやらされている、そのことにたいして、はたして彼女は何を思っているのか。嫌々なのか、とまどいながらも必死に理解しようと努めているのか、仕事だからとクールに距離をとっているのか。聞き手には、それすらもわからないのだ。
 さりとて聞きごこちが悪いわけでは、決してない。プロフェッショナルなコンセプトアルバムとして、作品自体は高いところで完結しているのである。
 このあたりの妙味を聞き手がどう受け取るかが、このアルバムの、また荻野目洋子という歌手をはかる分水嶺といえるかもしれない。