金井夕子「Feeling Lady」
- アーティスト: 金井夕子
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2007/09/19
- メディア: CD
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瀟洒! こんなおしゃれなアイドルのファーストアルバムって、この時代、この盤のほかなかったんじゃなかろうか。
全体の雰囲気としては、この年に大ブレイクした渡辺真知子や八神純子・庄野真代といった歌謡ナイズドされた中庸ニューミュージック系サウンドの影響が強い。都会暮らしの身軽な女性の日々のあれこれ、という感じ。
同期のアイドル石川ひとみ、石野真子らと比べると、あまりにも異質で別世界。むしろ翌年デビューの竹内まりや、杏里の初期の世界がもっとも近い印象を受ける。
他者の楽曲提供を受け、アイドル風でもあるけどど真ん中のアイドルというよりもちょっと大人向け、都会的でアーティスティックな気配もあるといった趣。
歌唱も、アイドルのファーストアルバム然とした不安定さ、迷いはまるでない。抑揚をきかせたながらも決して重過ぎない爽やかなアルト・ボーカルは、山口百恵の存在感と松田聖子の清涼感を足して2で割ったらといった実に絶妙な味わい。
どの曲も粒揃いで素晴らしいのだが、ディレクター・渡辺有三が後に「尾崎亜美と心中するつもりで作った」との言がある通り、尾崎亜美との相性がピカイチだ。
これだけ迷いなくズバリ豪速球ストライクを決めて売れないのだから、アイドル業界と言うのは、つくづくサウンドだけではないのだなー、と。
ともあれこのアルバムを契機に尾崎と渡辺は親交を深め、80年に尾崎亜美がキャニオン移籍にしたこと、さらに尾崎と渡辺のタッグによって、岩崎良美、岡田有希子、堀ちえみの諸作が生まれたことは隠しようもない事実。特に岩崎良美のアルバム――中期の「Weather Report」「心のアトリエ」は、今作の直系の系譜の作品と言ってもいいんじゃないかな。
また松田聖子の初期・河合奈保子の中期アルバムの基本トーンにあるのも、このアルバムのテイストではないかと、個人的には感じる。
セールス的には成功しなかったが、アイドルポップスにとって偉大なる一歩であった一枚。早すぎた80年代アイドルポップスがここに収められている。