本田美奈子「好きと言いなさい」

 全作B面の「恋人失格」の路線を今度は表面にしてみました、といった感じ。ゆえにB面「暗闇に緋いドレス」は「殺意のバカンス」風。中森明菜における「スローモーション」と「少女A」の対比のごとく演出しているとみて間違いないかな。これが本来のデビューシングルになるはずだったが美奈子の意向により「殺意のバカンス」差し換え。
 チアーリーディング風のぶりっ子サウンドにて展開されるのは、不良ぶったり強がってたりしているけれど、根は純で傷つきやすい女の子――というそれこそ「少女A」〜「1/2の神話」以来鉄板のツンデレ売野節。リフの「いじめてあげる」が「意地悪ね、あなた」につながるあたりの手際りよさには感服。いじめられていたのはむしろ彼女の恋心だったのである。美奈子の歌唱がぶりっ子しすぎであざとさが前に出ているのがちょっと難だけれども、及第点。
 ちなみにB面「暗闇に緋いドレス」、青春晩期の哀歓を歌っていてこれまた佳曲だけれども「不思議だね/心だけ少女のままでいたいから/こっそりと思い出を/手鏡で見るでしょう」。ここの詞、なかなか凄い。売野先生は、水とか鏡にまつわるものでいいものが多い印象あるな。
 こっから、当時の一年目アイドルとしてはありえない三ヶ月連続のシングルリリースだったりします。