本田美奈子 「Golden Days」

GOLDEN DAYS(DVD付)

GOLDEN DAYS(DVD付)

 本田美奈子の7回忌に合わせてリリースされたCD2枚+DVD2枚のボックス。東芝EMI時代の本田美奈子が堪能できる決定版といっていいかと。こういうの、待ってたんだよ。
 CD2枚は、シングルのA面B面をほぼリリース順に収録というシンプルな構成。とはいえ、こういうわかりやすいベストが本田美奈子にはなかったんだよね。美奈子にはオリジナルアルバム未収録のシングル曲がかなりあるので、アルバム補完という意味でも、お得な作りといっていいかと。
 可愛い新人アイドルが実力を発揮し、発揮しすぎてなんだかヘンテコ方向にメタモルフォーゼしていく過程が味わえるかと。美奈子のシングルをリリース順に聞くと、ホント反省会気分になるよね。あー、なんでこうなんだよー、みたいな。
 DVDはというと、これが今回の目玉っ。TBSに眠る映像を掘り起こして、商品化している。
 一枚は「DISPA in 武道館」。TBS系で放送したライブ映像で、88年にビデオとライブCDとして発売した「DISPA 1987」と別会場の収録(あちらは大坂城ホール)。だいたいのセットリストは同じものの、美奈子の歌唱はもちろん、編集・カット割りから何から全て別物となっている。映像的な趣向を凝らした編集とぐいぐい迫るカメラワークで息つく暇のない作りだった「DISPA 1987」と比べると、こちらはライブの全体像が見える作りといったらいいかな。引いた絵が多く、全体的にくっきりとした絵。しっかし、美奈子、化粧濃いよ。
 セクシーかつアーティスティックな方向に暴走しまくった87年のやりすぎ美奈子が堪能できます。マイコー風の赤いコスチュームで汗みずくになって踊りまくる姿をはじめ、美奈子の本気がすぎて、時々笑っちゃうシーンもあるものの、すべてが微笑ましく、愛。「HELP」の牢屋に閉じ込められる風演出とかさ、銀紙まとわりつけたような衣装の「孤独なハリケーン」とか、ホント、万事やりすぎなんだけれども、今となっては、ま、いいかな、と。ちなみに「Crazy Nights」平然としながらも結構トチリまくってます。
 そしてもう一枚が、まさに蔵出しっ。「ザ・ベストテン」「日本レコード大賞」「ロッテ・歌のアルバム」「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」などTBSの番組での歌唱映像をどどんと収録。歌前のトークなどは一切収録されていないものの、とはいえ、これは金星。
 可愛いけれども実力派の一年の美奈子、アーティスト宣言でマリリンな二年目の美奈子、海外進出でなんだかよくわかんなくなっていく三年目の美奈子、ホント激動だったよな、と、しみじみ。一番のレア映像は東京音楽祭の「SNEAK AWAY」かな。こんなのあったんだっ。ちなみにワイルドキャッツな四年目の美奈子は収録されてません。「悲しみSwing」の後いきなり「命をあげよう」。この時期TBSの番組にでなかったのか、それともワイルドキャッツのメンバーがNGだったのか。
 時系列で映像並べると、ビジュアル的にもマリリンは転機ではあったけれども、その後の、もっとトンでもなくなってく美奈子と比べたら、まだまだ全然フツーで大衆性あったよな。ハリケーンの美奈子はもうなんだこりゃだけれども、マリリンの美奈子はまだまだフツーに可愛い範疇だもの。
 今回の映像と音源のあわせ技で「アイドル・本田美奈子はいかなるものだったのか」という全体像のだいたいはつかめるんじゃないかな。本田美奈子をよく知らない人でも、80年代アイドルに興味があるなら、是非モノで買うべきボックス。これで8400円は全然安い。