FNS歌謡祭の朋ちゃんの件

 イチオ、コレ、触れておいたほうがいいのかね。FNS歌謡祭にて小室哲哉華原朋美、15年ぶりの再会。小室哲哉のピアノで華原朋美が「I'm proud」「I Believe」を歌い、2人は握手する。と。12時を過ぎたシンデレラの長い長い後日談に、ついに終止符を打たれた、ということなのだろう。たぶん。
 率直な感想を言えば、とうとう、ついに、という感慨は確かにあった。あったけれども、それと同時に妙な虚しさを感じたのも事実。冷めてたね、私は。直後の三谷幸喜の宴会芸のせいだけではあるまい。とうに葬儀も終わって埋葬もすましたものをあえてほじくり返すような、そんな鼻白む気持ちがあったね。
もう何年前の話だよ、と。
 白馬の王子様の小室哲哉は丸めた背中に哀愁のみっしり張り付いたしょぼくれたおじいちゃんになっていたし、シンデレラの朋ちゃんも、昔よりは歌はうまくなったし、美貌も年齢以上だけれども、それは、吉牛の汁だくかっこみながらひゅーひゅー雄叫びあげてた、ちょっと足りなく、かなり危うく、とてつもなくキラキラしてたあの朋ちゃんでは、けっしてなく。つまり、時は過ぎたんだよね、あたりまえのことだけれども。
 しかも、そんなことはもうとっくにわかっていたわけで。
 小室哲哉が歌手としての華原朋美に何かをまだ見ているとしたら違っただろうけれども、テレビを見る限り、そうではなかった。華原朋美も1歩ずつ忘れていく道を選ぶだろう。そうしてゆるやかにそれぞれが凡庸な日常に着地していく。 タレントとしての華原朋美、作曲家としての小室哲哉、それぞれがそれなりにこれからもやっていくだろう。しかし大衆を魅了する芸能の女神はもう二人の前には舞い降りるまい。
 そんな、とうに終わっていたことを、確かに終わっていると確認するための、虚しいセレモニーと、私は感じた。
 松田聖子郷ひろみのデュエット企画とか、アレとおんなじやね。身も蓋もなく言っちゃえば。