栗本薫、お別れの会

 栗本薫のお別れ会が九段会館で行われたのに参加した。
 始まる前の客席、今でもネットやらなにやらで繋がりがあるのだろう熱心な現役の女性ファン同士が、色々楽しげに語り合っている。
 はじまる。司会のアナウンサー・小倉淳がでてきた。早川書房の社長が弔辞を読み上げた。講談社の担当編集が弔辞を読み上げた。田中芳樹が三十年程前の思い出を語った。アニメ「グインサーガ」のプロデューサーが弔辞を読みながら、号泣した。彼女のピアノの先生が弔辞をあげて、追悼の一曲を演奏した。
 彼女の残した音楽の生演奏をバックに献花がはじまった。次々と白いカーネーションが遺影の前につまれていく。途中「グインサーガ」のテーマ「Guin With Panther Head」の生演奏が流れ出した。それに号泣する人、一緒に小さく歌う人、たくさんいた。
 残された夫、今岡氏に、献花をした半分近くの人が挨拶をしている。
 なんだかひどくわたしは宙ぶらりんな気分だった。多分自分はここにいるべきじゃない人なんだろうなと思った。ここに繰り広げられた「人々に愛されたまま逝った天才作家・栗本薫」というのに、なんらかの違和があったからだろう。涙をどこか覚めて見ている自分がいやらしい。
 わたしは彼女の遺影の前に立ち、なにかどうでもいいようなことを一瞬だけ頭の中で言葉にして、そして家路についた。
 これ以上なにか言っても下司なことばかり言いそうなので、言わない。