恩田陸 「puzzle」

puzzle (祥伝社文庫)

puzzle (祥伝社文庫)

 大好きな丸田祥三の廃虚写真が表紙なので買ってみた。中篇ミステリー。
 長崎にあるかつて鉱山、今は廃虚の無人島・鼎島で見つかった謎の三死体。ひとつは電気の届かない廃映画館の客席で見つかった感電死体。もうひとつは、島で一番高い廃高層アパートの屋上で見つかった墜落死体。最後のひとつは廃体育館で見つかった餓死体。この不可解な三つの死体、死亡推定時刻はほぼ同じだという。はたして事故か事件か、真相はいかに、というもの。
 90年代前半に新本格のブームってのがあって、その後にそれをテレビドラマ的に再解釈した「ケイゾク」とか「トリック」とかのテレビドラマが受けて、んでこれはその奇想天外ドラマミステリーをイメージした感じの作品っぽく感じた。
 小説は「piece」「play」「picture」と大きく三部に構成されていて、「piece」が現場に残されていた謎の紙片――いわゆるヒント集。「play」が本文、検事二人が現場を観察しながら色々と考察している。んで「picture」がいわゆる解答編。つまり事件をひとつのジグソーパズルに見立てて、こういう構成にしているのね。これを筆者はおそらく企画書段階で決めておいたんだろうけど、肝心の中身をあんまり考えてなかったんだろうな。話自体が、もう、なんというか、ひどい。
 話が核心にいたるにつれてどんどんとリアリティーが欠如していき、ナニコレ?感が増していく。探偵役の検事も、ロジック関係なく唐突にピコーンと正解引き当てすぎ。クイズ番組で正解あらかじめ聞いちゃってるゲスト回答者並みの不自然さ。
 ネタバレすっけど、だいたい屋上の謎の墜死体が「暴風雨で竜巻的な何かがそこで起こって、人が巻き上げられてたまたまそこに落ちたんだよ」とかさ、どうなのよ。
 長崎県軍艦島そのまんまモチーフな鼎島の描写もちょっと薄く、廃虚フェチなまこ的にはもうひとつだし、中年の男検事二人の丁々発止も、乙女成分過多で絶妙にいらっときた。少なくとも日本のおっさんはこんな喋り方、しない。「逆転裁判」の御剣さんじゃあるまいし。
 やーん、イケメンおっさんふたりが廃虚をアンニュイにふらふらしながら、ちゅっちゅしてるぅ――っていうだけの話だと思うので、BL臭だけでごはん何杯でもいけるって方以外は読むべきではないかと。BLでも、わたし的にはツボが違ったのでアウト。