中森明菜 「歌姫伝説〜恋も二度目なら〜 Daiichi Special Remix」

 2010年9月より稼動予定のパチンコ「CR中森明菜2」販促用としてプレスされた非売品CD。関連店舗や営業所などに配布されているかと。全15曲。今機で使われる中森明菜の楽曲を全てコンパイルしている。オープニングの「スローモーション」「少女A」のは、インストゥルメンタル。「少女A」「1/2の神話」「十戒」「北ウイング」「Desire」の五曲は前機「CR中森明菜」で使われた音源で、こちらはベスト盤「BEST FINGER」に既に収録済。今回の新録音は「スローモーション」「セカンドラブ」「禁区」「サザンウインド」「ミ・アモーレ」「TANGO NOIR」「TATTOO」に、書き下ろしの新曲「Crazy Love」。再録音は前回同様、原アレンジを忠実に再現するベクトルを向いている。
 なんでプロモーションディスクをわざわざ取りあげているか、というと、今回の書き下ろしの「Crazy love」以外の再録音の音源は、一般向けに発売されないかもしれない――と思っているから。明らかに、パチンコ店のBGMとして流れる用にスペックを落としてチープに作られている感があるのだ。はっきりいえば、通信カラオケよりは上、程度のオケ。原曲の弦やギターの音などを低予算だからと安直にシンセでソレ風に再現している印象になっている。明らかに「BEST FINGER」に収録された再録音源と比べて、手がかかっていない。大手のレコードメーカーがこのままで発売するにはちょっと躊躇するレベルのバックトラックになっている。
 ま、ソレ専用で作った音源なのだからそれでいいのかもしれないのだけれども、勿体無いのが中森明菜の声。彼女、昨年から声がいい意味で変化している――ある面では全盛期に近いなめらかでクリアな質感になっている――それが、ここにがっつり残されちゃってるんだもんなあ。オケは厳しいけれども、明菜のボーカルでいったら、発売しない手はない。って感じなのだ。
 元々がテクノ歌謡で打ち込み度の高かった「禁区」は、オケのレベルも気にならず、ギリギリ感漂うより切迫した明菜の歌唱がすばらしく、今回の白眉かと。久々のスタジオ録音のレア感ってのもあると思うけどもね。個人的には「TATTOO」「TANGO NOIR」「サザン・ウインド」あたりも楽しめたかな(――一方、どれとは言わないけど、原曲の生音度の高い曲は私にはちょっと厳しかった)。――前回いったので詳しく書かないけど、もちろん書き下ろしの「Crazy Love」は傑作。
 ユニバーサルに移籍して以降、うんざりするほどベスト盤やら再録音やらを繰り返してきた中森明菜だし、オケがこのレベルだとすると、この音源を一般発売してくれ、とはちょっといえないんだけれども、完全に埋もれさせるのも惜しいわけで、うーーん、なやましい。