佐藤史生 「精霊王」

■ 精霊王 89.12.20 小学館


●「精霊王」……オカルト・ホラー。ボランティア活動に勤しみ変人とも聖人ともいわれたある富豪が心ひそかに唱えつづけた呪詛、それが具現化し息子達に襲い掛かる――という話。読みやすい。パパやママが色々と大変な感じでドロドロとしていて、そのおかげで子供達が色々と巻き込まれるという話、これも結構佐藤さんの漫画では多いよな。
●「アシラム」……そんな実は世界を破滅させたがっていたパパの若い頃の話。センシティブなパパは成り上がりで欲深いおじいちゃんが大嫌いだったんだよ、という話。典型的なオイディプスコンプレックスやね。
●「ハヌマンを探して(バリ島旅行記)」……タイトル通りの友達と一緒にバリに観光に行ったよっていうエッセイ漫画。現地人にぼられたりぼられたりぼられたりでたいそう楽しそうです。


 わかりやすい物語で読みやすい良作。個人的には「アシラム」が好きかな、透明な絶望感があって。山奥の隔離病棟みたいな僧院が全部劇団の人でした、というオチ、結構好き。主人公のそれは金持ちのボンボンのモラトリアムな苦悩でしかないとも言えるだろうけれども、一概には否定できない切迫した力強さが作品にある。