Utada「EXODUS」

宇多田ヒカルの「EXODUS」がいよいよ発売になった。
日本ポップス界のトップに君臨しながらもたえず外様大名的に孤立していた彼女が、ついにアメリカに旅立つことになる。
しかし、彼女はそこでもまた孤立するのでは、というのが私の予想だ。
これはセールスの問題ではない。彼女がセールス面における成功をある程度なしえる可能性というのは充分ある、と思う。
しかし彼女の音楽はこの場においても、メインストリームたりえない、やはり異邦人のままでなかろうか、そんな予感がこの盤にはある。
―――彼女は日本にいれば欧米的といわれ、いざ欧米に渡れば日本的といわれるのではなかろうか。そんな二重国籍者的苦悩に早晩彼女は襲われるだろう。
そして彼女は真に帰属すべき場所をさまよい、その末に「帰属しないことこそが自らの主体である」というようなジプシー的国際人、ジプシー的主体性をもった一人の歌手として変貌するのでは、と私はみる。
そしてそんな彼女の音楽世界が日本に還流する時、欧米のポップスと日本土着の歌謡の世界にひきさかていた日本のポップスに真に新しい地平が生まれるであろう。(―――そうでなければ、藤圭子の娘でない。)
であるからこそこのアルバムはこれからの長い彼女の歴史の「EXODUS=出エジプト記」なのである。
今回は予言者のように語って終わる。