杉浦幸 「花のように」

 さらに明菜フォロワー。誰でも中森明菜にしたがるワーナー・パイオニアと、誰でも菊池桃子にしたがるモモコクラブと、誰でも榊原郁恵にしたがるホリプロ、その三社の綱の引き合いで、方向性が最後まで見出せなかった杉浦幸だけれども、この曲だけは傑作。
 87年6月の六枚目のシングル。矢野顕子作詞・作曲のドリーミーなテクノポップ。編曲は若草恵。
 ほぼ同時期に矢野盤のリリースもあり、いわゆる競作という感じとなったけれども、いやいや矢野盤にまったく負けていない。
 矢野盤はジャズの匂いの漂いながらもいかにも「矢野」という感じの――まぁ、つまりは「ラーメン食べたい」とかアレ風で、坂本・矢野コンビ最末期の円熟した世界だけれども、
一方こちらは、同じ曲でありながら、杉浦のど真ん中な"菊池桃子風"歌唱と、若草のコロコロと可愛いテクノアレンジで、ファンシーなアイドルポップに仕上がっている。桃子本家を凌いた、といってもいいかも。
 脱テクノを志向し始めた坂本・矢野組と、テクノポップど真ん中の杉浦・若草組の対比も87年という時代を象徴しているようで面白い。
 明菜風なんて目指さずに最初っからこっちで行けばよかったのに。まあ、しもぶくれのミルキーな丸顔なのにいつもフテった表情――っていうそこに明菜の幻影を見てしまうのもわからいでもありませんが。
 ちなみにこの曲や次の「18のSecret」は髪にレイヤーかけてて、本当にデビュー期の明菜っぽいです。動画サイトなどで是非確認を。