中森明菜 「BEST COLLECTION LOVE SONGS & POP SONGS」

 松の内もすっかりあけまして、こんにちは。今年もどうぞよろしく。イベント来てくれた方ありがとう。さてさて。この年始に結婚報道やら何やらワイドショーネタがやたら聞こえた明菜さんのちょいと前に出たベストアルバムから今年ははじめよっかな。
 2012年、中森明菜の誕生日間近にリリースされたもので、結構手にしたファンも多いんじゃないかな?
 ワーナー時代の全シングルにカップリング・アルバム曲を数曲プラス。リメイク盤とアナウンスされているように、全曲ミックスしなおしている。
 2500円で明菜の80年代の代表曲を網羅できるというお手軽さと、細かいリミックスやバージョン違いで、明菜ファンのライト層、ヘビー層ともに訴求してヒットを記録したのだけれども――これさ、どうよ。私はちょっと否定的なボジションを取らせていただきたい。
 ぶっちゃけて言えば、このアルバム、写真で言うならばフォトショップ加工した写真。所々にただよう違和感が、うーん、ねえ、どうよ。私は無理。
 いや、「古い写真だったんで、褪色補正かけましたよ」レベルの加工ならば良かったんだけれども、結構余計なことしているんだよ。写真で言えば、奥に引っ込んでるものを手前に置き直したり、なかったもの新たに置いてみたり的な。とはいえ一発で印象がガラリと変わるような、別物としてありかなと思わせるような大胆ミックスはなし。うんざりするほどオリジナル音源聞いている耳からすると、「ん?」という、ビミョーな違いがむずがゆい。特にアップテンポのものは結構ひどいの目立つよね。
 ま、これが効果的になっているものもあるとは思う。「Fin」「ジプシー・クイーン」と言ったあたりね。当時の明菜の意向なんだろうけれども、ボーカルのエコー処理がちょっと過剰なフシがあって、そこがクリアになったのを評価する人も中にはいるんじゃないかな。
 とはいえ、わたしはオリジナルミックスを支持。この86年ごろって、明菜の声変わりというか、ボーカリストとして完成の域に達する直前の最後のボーカル過渡期であってさ、実際エコーごっそり取っ払っちゃうと妙に歌が幼く聞こえて、歌の世界観に届ききってない感じが、ちょっと漂っちゃうんだよね。逆を言えば「あの処理は必要な処理だったんだな」と感じ入ったりもしたのですが。
 熱狂的な明菜マニアが、そういう細かい違いを楽しんで聞く、それはアリではあるのだろうけれども、じゃ今後はこちらを日常聞き用に変えるかというと私は変えませんね、ええ。なんかさ、見知らぬ他人が、ちまちま小賢しく弄った音源って印象、拭えないんだよ。
 過去の音源をリファインしたリューアルベストとかって最近80年代のアイドルものにはちらほらあってさ。ナンノの「Re-fined」とか斉藤由貴の「ビンテージベスト」は、わたしも聞いていて「これはありかな」と思ったんだけれども、そっちはさ、ディレクターが当時とおんなじっていうのが大きいのか、きちんと過去と繋がった音なんだよ。音は変えても魂がおんなじというか。一方、明菜のこれは、違う。明菜の歌の良さ、魅力をあんまり理解してない人間が小手先でぐっちゃぐっちゃいじくったという感じ。ぶっちゃけ動画サイトにある「リミックスしてみた」とスタンス的に変わんねーんじゃね、と。私はそう思うわけです。
 たぶん明菜が聞いたなら、かつて「スーパークラブミックス」の企画にボツ出した時のように「これならリミックスした意味ないんじゃない」とか言いかねない中途半端なシロモノだと断言するね。 鬼の居ぬ間にじゃないけれども、休暇が長引けば長引くほど、こういうしょーもないものがどんどん発売されてしまうので、早く明菜様には復帰していただきたいものです。
 そういや今月末には、余計なセレクションベストが出るみたいですけれども、あれもさ、ひどいよね。なんとかならんの?「ドラマティック・エアポート 〜AKINA TRAVEL SELECTION」って。ひとまず聖子の企画パクんなよな、と。「北ウイング」ではじまって「ドラマティック・エアポート」で〆ってさ、松田聖子のセレクションベスト「エトランゼ」のDisc2、一曲目「時間旅行」で空港から旅立って、ラスト「Wing」で戻ってくるっていう構成の完全なるモロパクやん。選曲・構成担当、恥を知れよ。もう。焼き直しが悪いとは言わないけれども、やるならやるでもっと丁寧に仕事しなさいよ。と、正月明けからご立腹なまこなのでした。