原田貴和子 「彼のオートバイ 彼女の島」 

 薬師丸ひろ子の妹分オーディションで原田知世に特別賞を与えたのは、当時バレリーナ目指していた姉貴狙いだったから、なんて逸話もあったりする、実は本命だった知世姉・原田貴和子の初主演映画と同名タイトルの主題歌。86年作品。
 映画は、片岡義男の作品を大林宣彦監督で映画化させるという企画自体が土台無理モノだったとしかいえない残念な作品だったけれども、歌はなかなか(――って、カドカワ映画って、こういうパターン多かったよね)。
 詞は御大、阿久悠。作曲は佐藤隆で、彼お得意のヨーロピアンなエトランゼポップス。「桃色吐息」とか、アレ系ね。詞に具体性がない所がちょっと減点だけれども、いい線行ってる。
 ボーカルは妹の知世に似て、清潔感のあるところが好印象、当時の知世よりもより安定した歌唱力と翳り漂う湿った雰囲気が妹との大きな違いかな。ポップスよりの妹と対照的に、しっとりとした歌謡曲が似合う感じ。他の歌も聞いてみたいな、と思わせるものがある。
 とはいえ、映画の不発と同様に歌も不発、翌年には家族でプロダクションを作って、妹ともにカドカワから独立する。その後は、意外なほど歌にこだわった妹とは対照的に彼女の歌仕事はたったシングル一枚で終了することになる。
 このあたりから所属俳優の独立が多発し、盟友だった大林宣彦とも決裂、映画の企画も二転三転するなど、角川春樹プロデュースによるカドカワ映画は空転していく――というのは別の話。
 それにしても、渡辺典子といい彼女といい、美人タイプのおねーさんキャラがつくづく活かせない春樹っち。趣味じゃないなら雇わなきゃいいのにね。このあたり、彼にしかわからん事情があったのでしょうが。