小泉今日子「Today’s Girl」

Today's Girl +7(紙ジャケット仕様)

Today's Girl +7(紙ジャケット仕様)

 85.02.21発売、最高第1位、31.9万枚。彼女のオリジナルアルバムでは最大の売上を記録している六枚目。
 シングルの売上で見れば、83年年末の「艶姿ナミダ娘」から85年年初の「スターダスト・メモリー」まで、30万枚の売上を常に超える高止まりをキープしていたコイズミ、アルバムにおいてもその数字にようやく追いついたといった所かな。
 アルバムの作りは、彼女の当時のシングルの本線であった、ピンクレディーの以来の系譜であるピ久ター・コミカルアイドルポップス路線を中心にまとめている。ユメ科ウツツ科、大和撫子インマイハート、和蘭美人和蘭美人と呼ばないでー、と、歌詞もほぼ無意味な言葉遊びの応酬、タイトルがそもそも駄洒落だもんね、「今日子=Today's Girl」ってさ(ちなみにタイトル曲は秋元康の作詞、そこ、やっぱりといわないように)。案外こういうアルバム、出してなかったんだよね。小泉今日子のパブリックイメージに一番近いがゆえの好セールスなのだろう。
 とはいえ20年以上経って、聞くには、ちょっと辛いものがある……。初めて聞いたの数年前だけれども、その時、ちょっと驚いたもの「お、音がペラッペラやなー」と。トップアイドルのアルバムとしては、あんまりにも貧弱。特に低音の薄さは、ホントこれないわ。作家陣も、筒美京平馬飼野康二林哲司井上大輔新田一郎原田真二高見沢俊彦秋元康売野雅勇康珍化森雪之丞っていう、85年段階でのヒットメイカー全員に書いてもらいました的な、ほぼ無策に近い全方位外交っぷり。むろん本人の志向も垣間見えない。
 オンタイムでの魅力はあったのだろうけれども、実がない。エバーグリーンなアルバムとはなりえなかった、そんな時に流された一枚ともいえる。
 ともあれ小泉今日子のアイドルとしての人気はここがピーク。ここを境にアルバム・シングルともに一気に数字を減らして、以降のコイズミは悪く言えばコラボやタイアップなどの企画に走ることに。「夜ヒット」のデラックス化、「ベストテン」の久米宏勇退松田聖子の結婚休業、おニャン子クラブ結成、これと期を一する形で、先行していた80・82年組の売上凋落がはじまっている。明菜も「ミ・アモーレ」を頂点に売上をごそっと落として作風も変えるしなー。85年春ってホント、アイドルポップスにおいては大きな段落だ。