内海和子「LUNCH TIME」

 87年3月発売。おニャン子クラブ会員番号13番・内海和子の唯一のソロアルバム。おニャン子の「存在」としての顔が新田恵利だとしたら、「ボーカル」の顔が彼女。歌えないアイドル集団であったおニャン子にあって、歌える歌手として、城之内早苗や河合その子らとともに歌の屋台骨を支えたのが彼女であった、が――その後の展開が残念な形に終わったのは、周知の通り。このアルバムをもって彼女はおニャン子を卒業するが、その直後にまともな芸能活動はほぼ絶無に。そして誰もが忘れた頃にヘアヌード写真集を出版する、という典型的な残念アイドルの幕引き。
 ソロデビューにあたっておニャン子系とのパイプが強い田辺やナペプロ・ボンドが引き受けず、よりによって売出し中でまだ結果の出ないアイドル(――山瀬・井森、伊藤美紀仁藤優子鈴木保奈美)が山ほどいるホリプロに任せるというあたりも、ここしか拾ってくれなかった感が漂っているし、卒業記念シングル「20歳」いたってはおニャン子系の初のベストテンランクイン陥落シングル(最高15位)だったりするわけで、ま、ぶっちゃけて言えば、彼女に関しては、ソロデビューしないほうが幸せだったのかな、というのが正直な印象だ。
 このアルバムにしても、タクラミの力がまったくない。この歌手をホンモノにしてしてやろうというプロデューサー・ディレクター、作詞・作曲者など、周囲の大人のタクラミの力が、ないのだ。
 てかさ、シングル入れましょう、カップリングも入れましょう、ついでにおニャン子名義でリリースしたソロ曲もいれましょう。で、アルバムは収録の半分が既リリース曲って、どんな契約消化アルバムだよっていう。
 作家陣もバラッバラ。秋元+ゴツグ、秋元+佐藤準といったお約束ラインもあれば、売野+芹澤のチェッカーズ組もあり、崎谷健次郎土屋昌巳国安わたる、といったミュージシャン系もあり、で、どのあたりに訴求しているのか不明。
 彼女の場合「とっておきのビーフシチュー」みたいなきゃぴきゃぴ(死語)っとした可愛いくも頭の悪そうな、いかにもおニャン子ポップス然としたものより、「サヨナラは冷たく」「20歳」のマイナーで翳のあるしっとりとした路線を選んだほうが、年齢的にもビジュアル的にも似合っていたと思うんだけどな。とはいえそういうことを考慮する育てる気のあるスタッフがそもそもいなさそうな感じ。
 肝心の歌も、おニャン子クラブにあってはうまかったのかもしれないが、ソロのアイドルシンガーとして見たとき、正直、何かが足りない。ステータス的に全部ど真ん中中庸といった印象の、強力な武器のないボーカルなのだ。
 子役タレント時代から芸能界にしがみついた彼女だからして、なにがなんでも成功したいという野心はあったのだろう。そこにおニャン子スタッフが親ゴゴロを見せた形でのソロデビューだったのだろうけれどもね。これだけ頑張っているんだし、と。残念だけれどもここが限界なのかな、という、切ないアルバムだ。