◆ TAO 「FAR EAST」

 アルバム『不思議』やシングル「TATTOO」など、80年代後半の中森明菜サウンドメイクに携わった EUROXの前進、TAOの最初で最後のアルバム。83年リリース。小ヒットとなった「銀河漂流バイファム」主題歌「HELLO, VIFAM」を収録している。ディレクターはワーナー時代の明菜と同じく藤倉克巳。

 ジャケットはロシア構成主義的なTAOというロゴ――Oの部分が陰陽マークになっている。タイトルやジャケットなどから、『不思議』と同様のエスニック色の強いゴテゴテのプログレッシブロックなのかな、とおもったら、そうでもない。意外とシンプルなサウンドワーク。
 80年代中期らしいテクノ・ニューウェーブ臭も強いが、とはいえ、そこまでズブのそれでもなく、ビートリーなシンプルさがむしろ際立っている。全曲英語曲で、日本人らしくない、乾いて理知的なサウンドが、なかなか好感触。
 当時の、デュラン・デュランとかあのあたりの、ブリティッシュ系ロックバンドの作品といっても、これ、気づかないな。全篇で鳴り響く関根杏里のバイオリンも優雅(――『不思議』でも彼のバイオリンは絶妙であったけれども、『不思議』での悪魔的なそれとは感触は違う。こちらはなんとも爽やかです。)。このアルバムリリース後、海外デビューの話も浮上したというが、それもさもありなん。このアルバムを聞くかぎり、このバンドは、日本というフィールドのみに限定する必要というのは、ないな、と。
 とはいえ、その海外デビューするかという時期に、バンドは空中分解するわけで、まあ、世の中というのはうまくいかない。

※ 備忘録。明菜の『不思議』と同時期にEUROXは、ニャンギラスの「自分でゆーのもなんですけれど」を「岡原勇里」なる名義で担当している。メンバー四人の名前を合わせた変名なのだが、同時期に明菜とニャンギラスですか……。