藤井一子 「初恋進化論」

「少女A」のなにが偉大かって、山口百恵阿木・宇崎路線と千家・都倉路線のふたつを止揚して、極めて汎用性の高い《セックスをネタにして「大人はわかってくれない」とアジテートするツッパリ少女歌謡》という一ジャンルを築いたことなのであり、その文脈でいえば、ミポリン・静香はもとより、安室もSPEEDも相川七瀬も浜崎もみんなみんな明菜フォロワーなのである。
というわけで、またまた明菜フォロワー。
毎度おさわがせします」→「夏・体験物語」ときて、歌手デビューした藤井一子。――というわけでこれまた明菜というより、ミポリンフォロワーか。
ツッパリ系アイドルのメディア進出面においての雛型を作ったのは、ミポリンなのかもなぁ。
そんな彼女の二枚目。86年年末発売。作詞は阿木燿子、作曲は筒美京平
阿木燿子という作詞家が好きだ。
彼女って、逆転満塁サヨナラホームランクラスの好プレーか、みのもんたにナレーションでいじられるようなすっとんきょうな珍プレーか、このふたつしか出来ない。
ある意味、いつも本域で、流したプレイでほどほどで済ますということを知らないのだ。
いつも100点か0点、60点くらいの、悪くないけど印象に残らないという、そういう作品がない。
良くも悪くもつねに記憶に残る作品をドロップしてくれるのだ。ワンアンドオンリー阿木燿子
――というわけで、こちらは見事な珍プレー作品。
「昔キスならおでこ 今ならアソコ アソコ」というサビに、ちょっと待て、と誰もがおののいてしまう一品。
もうはっきり云ってこの曲はそのインパクトだけか、と。
作詞家デビュー以来、エロスを最大にして至高のテーマとすえて創作しつづけてきた阿木ねぇさんの見事な珍プレーです。
エロって、ある面、笑えるんだよねぇ。
とはいえ、この曲をはじめ「E気持ち」とか「夏の雫」とか「紳士同盟」があるから「港のヨーコ」や「プレイバック」や「魅せられて」や「Desire」が生まれるのである。嗚呼。