南野陽子 「最終オーダー」

 05年、20周年記念「NANNO BOX」に収録されたアダルティーな新曲。作詞・南野陽子、作編曲・萩田光雄
 同窓会的な安穏とした曲かと思ったらさにあらず。「あの頃、懐かしいわね」なんてモノでなく、あの頃はむしろ生々しく現在へとつづいていた、あの頃は終わってなどいなかった、という感じ。
 喩えていうなら、同窓会に行ったら、昔の恋人がなんだか今でもとっても可愛くって、しかもなんか前にはなかった艶っぽさも出てきちゃてて、焼けぼっくいに火がついちゃうって、といったラブアゲインな佇まい。
 昔のように若くはないけど、昔のような失敗はしたくないけど、迷う時間はもう残されてないはず、なのに――。不惑間近の南野陽子のためらいがちな誘惑が、エロい。迷いながら、ここまで来たらお互い堕ちるしかないって、ホントはわかっている。ホテルのルームキーはもう隠し持っている。
 その昔、アイドル歌手として末期の頃「テレサ・テンみたいな歌が歌いたい」といって吹き込んだ「ダブルケーム」が大失敗した南野陽子だけれども、今回は大成功。40代前後の女性のリアルが濃密に漂うアダルト歌謡として見事に昇華されている。
 またかつての「トラブルメーカー」がプロダクションと南野陽子との葛藤を男女の恋に置き換えていたように、この歌は南野陽子が自らとファンへ想いを男女に置き換えた曲と見てとれることも可能。「迷わないで」だなんて誘われちゃ、長年のファンならば歌手・南野陽子のあの時やってこなかったセカンドステージを期待してしまうものだが、それは「うたばん」企画というあまりファンの望まない形で展開することになった(――あれは、なかったよなー、特にジャケット写真(哀)。
 思わずラジオで「まだ歌を諦めてない」と気炎をはいたり、アニメっぽかったら受けるかなと頼まれてもないのにアニメソング風の歌を一人勝手に作ってたり、相変わらず誰も参加しないレースで独走状態の南野さんですが、ホント、本人のやる気があるならば、是非歌やってほしいんだけれどもなあ。CDはインディーズ、ライブは小さなライブハウスで弾き語り、とかそういうのでもいいからさ。25周年の今年、ひっそり期待してるんですけど。