荻野目洋子 「Dear Pop Singer」

ディア・ポップシンガー

ディア・ポップシンガー

■ 2014年版「ノンストッパー」

 安室奈美恵が所属事務所との契約でもめているらしい。ライジング・プロ(ヴィジョンファクトリー)からの独立を画策しているとも噂されている――というこのタイミングでライジングの創業アイドル荻野目洋子が久々にニューアルバムを出すなんて話を聞くと、どうも裏事情を勘ぐってしまうというか、ストライキで管理職が久々に現場に狩り出されたといったところなのかしらん、と余計なことまで考えてしまうが、内容はいい。
 30周年記念ということで、自身のヒット曲のセルフカバーを中心としながらカバーやオリジナル新曲も、という再始動にあたって極めて無難な構成といえるが、徹底的にダンサブルなサウンドで統一しているのがいい。同窓会系アルバムでよくあるアコースティック・バージョンの「逃げ」は一切打っていない。かつての自分が築き上げたものに対してきちんと今の自分で勝負している。
 むろん歌唱力も落ちていない。厳しく言えば10〜20代前半のボーカルと比べると声のアタックの強さはさすがに多少マイルドになった感はあるが、今でも十分戦える。カバーも「ホット・スタッフ」「Lovin' You Baby」と間違いがない。
 変にコンセプチュアルになることなく、カバーもシングルも関係なく、ただひたすら踊れる曲をドサドサ詰め込みましたというわかりやすい作りは、かつての名盤「ノンストッパー」(87年のオリコン年間チャート一位作品)を想起させる。これこそ80年代のビート系アイドルの代表選手・荻野目洋子の世界であり、その後安室奈美恵、MAX、SPEEDと90年代に花開いたライジング系アイドルポップの本質であり、源流。
 2001年に結婚以降、パートタイム的にポチポチ歌ってはいたもののボサノバやらフォークやらと「それ、違うだろ」な作品ばかりだったオギノメがようやっと産休終えて戻ってきた。「荻野目洋子」が好きな方は是非な一枚。次は全曲オリジナルのアルバムが聞きたいな。